バラク・オバマが贈った卒業スピーチに学ぶ「自ら選び、動く力」

2020年。世界はかつてないほどの混乱に包まれていました。

新型コロナウイルスによって、日常は止まり、学校も職場も閉鎖。

卒業式さえ中止となる中、将来への希望と不安が入り混じる若者たちに向けて、ある人物がスピーチを届けました。

それが、第44代アメリカ合衆国大統領・バラク・オバマ氏です。

本来なら祝福に包まれるはずだった門出の瞬間に、オバマ氏は静かに、しかし力強く問いかけます。

“This pandemic has shaken up the status quo and laid bare a lot of our country’s deep-seated problems.”
(このパンデミックは、社会の現状を揺るがし、私たちの国が抱える根深い問題を白日の下にさらしました)

そして、ただの祝辞ではなく、「この時代にどう生きるか」という問いを、スピーチという形で卒業生たちに託しました。

この記事では、この2020年の卒業スピーチを通して、私たちビジネスパーソンが“今、どうあるべきか”を一緒に考えてみたいと思います。

Graduate Together(公式YouTube)

スピーチの背景・概要

2020年、世界中が新型コロナウイルスの脅威に直面していました。

アメリカでも学校の閉鎖やイベントの中止が相次ぎ、卒業式という人生の大切な節目を迎えることさえ、簡単ではなくなったのです。

そんななか、バラク・オバマ元大統領がオンラインで行った卒業スピーチは、若者たちへの希望と行動のメッセージとして、大きな注目を集めました。

  • イベント名
    Graduate Together: America Honors the High School Class of 2020
  • 日時
    2020年5月16日(全米同時放送)
  • 対象
    アメリカ全国の高校卒業生
  • 形式
    テレビ・ネットを通じたオンライン卒業式
  • 主催
    LeBron James Family Foundation、XQ Institute ほか

その後、YouTube主催の「Dear Class of 2020」(6月6日)では、大学生や世界中の卒業生に向けても、オバマ夫妻がメッセージを発信しています。

要点①「役職がなくても、リーダーのように振る舞え」

オバマ氏のスピーチの中で、とくに印象的だったメッセージのひとつがこちらです。

“Do what you think is right. Stand up for what you believe in.
The truth is, you don’t need us to tell you what to do.”
(正しいと思うことをしなさい。信じることのために立ち上がりなさい。
実のところ、あなたに何をすべきかを教える必要なんて、私たちにはないのです)

この言葉は、「誰かに指示されるのを待たない」「自分の判断で行動する」という、“自律型のリーダーシップ”を促すものです。

オバマ氏は、こうも語っています。

“Be the leader now, not sometime later.”
(“いつか”じゃなく、“今”リーダーになりなさい)

つまり、役職や肩書きがあるかどうかは関係ないということです。

「上司だから」「社長だから」ではなく、「信念に基づいて動く人」がリーダーなのだと、強く訴えています。

オバマ氏は、混乱と不確実性のなかでも「自分で考え、信念に従って行動する人」が新しい時代をつくるのだと、卒業生に向けて強く語りました。

この姿勢は、ビジネスにおいても変化の激しい現代において求められる、“自走する人材”の在り方そのものと言えるでしょう。

要点②「今ある問題に声を上げ、関わることを恐れるな」

オバマ氏のスピーチのもう一つの柱は、「社会の問題から目をそらさず、行動する勇気を持つこと」です。

当時のアメリカでは、コロナ禍に加えて、人種差別や経済格差、政治的分断といった問題が顕在化していました。

そんな中でオバマ氏は、卒業生たちに対してこう語りかけます。

“If the world’s going to get better, it’s going to be up to you.”
(世界がよくなるとしたら、それはあなたたち次第です)

オバマ氏は、現実の問題に対して「知識をつける」「声を上げる」「行動する」ことの重要性を強調しています。

“Leave behind all the old ways of thinking that divide us.”
(私たちを分断する古い考え方は、手放しなさい)

これは、社会や組織の課題に対して、他人任せにせず「自分の問題」として捉える姿勢を求めているのです。

“That’s what these past few months have shown us — the world is full of uncertainty. But your voice matters.”
(この数ヶ月が示したのは、世界がどれほど不確かでも、あなたの声には意味があるということです)

オバマ氏は、未来を変えるのは「立場」や「能力」ではなく、一人ひとりの意思と行動だと伝えました。

それは、変化に向き合うビジネスパーソンにとっても、まさに“行動の指針”となる言葉ではないでしょうか。

ビジネスへの応用

バラク・オバマ氏が卒業スピーチの中で繰り返し語ったのは、「自分で選ぶこと」「その選択に責任を持つこと」でした。

これは、私たちが日々の仕事の中で直面するさまざまな「決断」にもつながります。

上司に言われたから、ルールだから、会社の文化だから——

そうした“他律的な理由”ではなく、「自分が何を信じて、どう行動するのか」という“自律的な意思”が問われているのです。

“Do what you think is right.”
(あなたが正しいと思うことをしなさい)

この一言は、働く人にとっての「判断力」と「主体性」の重要さを突きつけてきます。

立場や役職、年次に関係なく、自分の価値観に基づいて行動すること。

それこそが、チームや会社にとっての“健全なリーダーシップ”になります。


変化の激しい現代では、「上から言われたことだけをこなす」働き方は、もはや限界があります。

自分の判断で動き、選んだ道に責任を持つという姿勢が、個人としても組織としても、次のステージへ進む原動力になります。

オバマ氏のスピーチは、社会の話をしているようでいて、実は一人ひとりの“働き方の哲学”にまで通じる話だったのです。

まとめ

2020年、世界中が不安と混乱のなかにあったとき。
バラク・オバマ氏は、卒業式を迎える若者たちに向けて、「リーダーはどこかにいるのではなく、あなた自身がその一人だ」と語りかけました。

“Be the leader now.”
(リーダーは、今のあなた自身です)

このメッセージは、私たちビジネスパーソンにも強く響きます。

立場や職種に関係なく、「今、自分にできる最善は何か」を考え、行動する。

それが、組織を、社会を、そして自分自身の未来を変える一歩になるのです。

職場の問題に気づいたとき、声を上げるか黙るか。

チームの方向性に迷いが生じたとき、自分から動くか誰かに任せるか。

どちらを選ぶかで、その先の結果はまったく変わってきます。

正しいことをする勇気。

目の前の問題を“自分ごと”として捉える視点。

そして、役職や年齢に関係なく「リーダーとして振る舞う」という覚悟。

オバマ氏のスピーチは、こうした力を一人ひとりが持っているという希望を、私たちに思い出させてくれます。

社会や組織の未来は、どこか遠くにあるものではありません。

希望は、私たち一人ひとりの中にあり、小さな行動から始まるのです。