「読書の秋」をテーマにしたスピーチ

皆さん、おはようございます。

秋と言えば読書の季節。しかし、私たち現代人にとって、仕事をしながら読書の時間を確保することは容易ではありません。週5日の仕事、家族との時間、その合間を縫っての生活や人間関係の維持。こうした日々の中で、ゆっくりと本を読む時間を見つけるのは至難の業です。

では、昔の人たちは仕事と読書を両立できていたのでしょうか。

実は、日本人の近代的な読書習慣は明治以降に始まったものです。明治から戦後の社会では、立身出世のために教養や社会に関する知識が重要とされ、本や雑誌はその知識を得るための重要な媒体でした。1980年代以前は、長時間労働に従事する人々でも本を読めていたのは、それが仕事や社会的地位の向上に直結すると考えられていたからです。

しかし、1990年代以降、状況は変化しました。労働や成功に必要なのは、自分に関係のある情報を探し、それをもとに行動することだと考えられるようになりました。そのため、一見無関係に思える幅広い情報が含まれる読書は、働く人々にとって遠ざけられがちになったのです。

そして、2000年代以降は、インターネット・スマートフォン等の普及により、手軽に情報が取得できるようになったため、ますます読書離れが進んだと思われます。

ここで、読書の本質について考えてみましょう。

読書とは、自分の興味や関心、つまり「自分の世界」を超えて、新しい考え方や視点に触れることです。例えば、書店に行くと、その時の自分の関心事によって目につく本が変わります。これは、自分の興味という「枠組み」の中で本を選んでいるからです。

しかし、本を読むことで、自分とは異なる考え方や経験、つまり「他者の世界」に触れることができます。これが読書の醍醐味であり、新しい発見や成長のきっかけになるのです。

ところが、本が読めない状況とは、新しい世界をつくる余裕がないということです。仕事に追われて余裕がなくなると、自分に直接関係のあるものばかりを求めてしまい、未知の情報や考え方を「ノイズ」として排除してしまいがちです。それは、仕事への過度なコミットメントによる余裕のなさが原因かもしれません。

今後、80年代以前のような「労働のために読書が必要な時代」はもう戻ってこないでしょう。しかし、だからといって文化的な時間を楽しむことを諦める必要はありません。私たちは「トータル・ワーク社会」に生きているからこそ、仕事に全身をコミットすることの危うさを自覚し、「半身のコミットメント」を心がけるべきではないでしょうか。

働きながら本を読むコツは、まず、SNSで読書好きのアカウントをフォローすることをおすすめします。これにより、新しい本との出会いのきっかけが増えます。

また、帰宅途中にカフェで読書する習慣をつけるのも良いですし、現代は重い本を持ち歩かなくても電子書籍を活用することで、通勤中など、わずかな時間でも読書ができます。

定期的に書店に足を運ぶことも大切です。様々なジャンルの本に触れることで、新しい興味が芽生えるかもしれません。

最後に、無理をしないことが大切です。読書ができない時期があっても、焦らず、自分のペースで読書を楽しんでいきましょう。

読書は、私たちの視野を広げ、新しい考え方や感性を育てます。忙しい日々の中でも、少しずつでも本を読む時間を作ることで、仕事だけでなく人生も豊かになっていくはずです。

これからの「読書の秋」、皆さんも新しい本との出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

ありがとうございました。

参考文献

こちらの書籍を参考にさせていただきました。